岡山県で獣害対策研修会

3/3(日)岡山県美作市の上山地区で獣害対策研修会。

素晴らしい棚田の景観のある地域で、60世帯160人の内約20世帯40人が移住者で構成されているということです。移住者や関係人口が高齢化する地域の歴史や伝統文化を引き継ぎながら、耕作放棄された棚田を再生させて持続可能な地域づくりを目指すNPO法人英田上山棚田団さんの取り組みはとても先進的でもっと深く知りたいので今度は視察に行きたい!と思います。

さて、この日の研修会では、野生動物のこと、獣害対策の基本的な考え方や具体的な技術、他人まかせにするのではなくて、集落でみんなで話し合いながら前に進めていくことの大切さについて、お伝えしました。

みなさんからも、たくさん普段の被害のことや対策のこと、意見や質問を出していただきました。

丹波篠山市の獣がい対策推進計画の話もしたところ、参加された住民の方がパンフレットを指さして、『ココ(「人が集まる魅力的な地域にする」という前向きな目標)があれば、獣害対策もなんでもできるんだ!』と発言されてました。

ホント、それだと思います。

すでに多くの人が集まっていて、それを進める力強い推進力(棚田団)がある地域なので、こういう機会を経てさらに元々地域に住まれている方と移住者と力を合わせて、同じ未来を見据えて前向きに取り組んでいくんだろうなと、感じました。

その心構えでいれば、まさに獣害対策でもなんでもできます!みんなの共通課題なので、獣害対策はそういうことを考えるきっかけとしても、とても機能しやすいと思っています。

また丹波篠山の仲間といっしょに勉強しに来たいです。

以下↓、同行した北大の伊藤くんの感想もどうぞ。

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北海道大学文学院の伊藤です。昨日の獣がいフォーラムに続いて、NPO法人英田上山棚田団さんが主催の「住民主体による効果的な獣害対策勉強会」に同行させていただきました。

【問題意識ともやもや】

私は普段、札幌市近郊の家庭菜園の野生動物と人間の関わり合いを研究しています。私が調査をしている畑でもシカ・アライグマなどの農作物被害が発生しており、畑を耕作する方々との日々のコミュニケーションで対策をどう伝達すればよいか悩んでおりました。

音や光を出す装置などを置いた対策を実施しているが、意味がないと断じてしまうとせっかくのやる気に水を差さないだろうか…。電気柵が有効とただ伝えるだけでいいのか…。

そんな「もやもや」を解消するヒントにならないかと思い、勉強会への同行を楽しみにしていました。

【勉強会の流れ】

講習会は、どんな動物の被害にあっているか?という参加者の方々(多くは上山集落にお住いの方々)への質問から始まりました。「シカ・イノシシ」「アナグマ」「タヌキ」と一通り被害を出す動物が出そろった後に、動画を用いた動物の名前あてクイズを実施されました。ここまでで、参加者の皆さんは大盛り上がりしていました。

次になんで捕獲だけじゃダメなのかといった、捕獲をする場所の優先順位付けや農地の防除の重要性が丁寧に解説されていました。続けて、個人が各対策をするうえで重要な点を動物の反応を交えた動画を交えながら紹介されていました。動物の反応を動画で見せながらも、どうして電気柵をくぐることができるのか?などを参加者からの投げかけに答える形で進めていました。

個人での対策を一通り説明すると、今度は集落ぐるみの対策をどう進めていくかなどが情報提供されました。特に、集落での定期的な話し合いの大切さが強調されていました。

発表がひと段落すると、参加者からの質問タイムに入りました。地域は全く違いますが、札幌市でもよく聞かれる音・光・におい対策は効くのか?に関する質問もたくさん出ていました。

【相手に寄り添う・地域で考える】

講習会を通して、その対策をする理由やなぜ効果がないのかといった理由を相手の文脈に寄り添って伝えることが重視されていることを強く感じました。動物の反応を動画で見せたり、なぜ動物の行動を行うかを身近な例に置き換えて解説したりなど工夫が随所に見られました。

また、勉強会の最後に「区ごとで話し合う場を設けよう」との意見が参加者側から出たことも印象的でした。地域ごとに対策の解がある旨を鈴木さんもおっしゃっていましたが、解を生み出すための話し合いが定期的に実施できるかどうかが、本当に重要ではないかとも感じました。

地域での話し合いと科学的な知見を話し合いの場に翻訳できること、その2つの重要性を札幌へのお土産としてもって帰ろうと思います。